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終末のフール By伊坂幸太郎

おはようございます!

朝9時にカタカタと本の感想を書いています。

ネタバレなしなので是非、未読の方もご覧ください。

 

伊坂幸太郎さんすごく有名なのに今更初めて作品を読みました。

友人からのすすめもあったのでとりあえずタイトルにもあるように終末のフールを読みました。

f:id:vanessa0131:20200715075933j:plain   おもしろかったです。

圧倒されたとか感動しましたとか劇的な感情はあまり抱かなかったですが、著者が考えている事がわかりやすくストーリーや、登場人物に組み込まれ文章も明快でわかりやすい本。

まず作品のあらすじをざっくり。

 

本作は8つの短編の連作集。

連作ではあるがチャプターを超えての登場人物同士の関わりはそこまでないので短編集に近い印象です。

1終末のフール

2太陽のシール

3籠城のビール

4冬眠のガール

5鋼鉄のウール

6天体のヨール

7演劇のオール

8深海のポール

 

という構成です。

ある日、八年後に小惑星が地球に衝突すると報道がされ、人々は恐怖やパニックから暴力や犯罪、自殺など様々な行動にでその後5年経過し、あと三年で地球が滅亡するという頃、仙台を舞台に余生の過ごし方や余命・死に対する考え方について描かれている。

個人的に一番はっとさせられたのは、鋼鉄のウールかな☺️

 

ある男性がジムに通い、キックボクシングを習っていた話です。

昔は大勢の人が練習に励んでいましたが、こんな時に(地球が3年後に滅亡するこの時期)キックボクシングなんてと辞めていく人が大半の中、残ったのは苗場と会長と僕の3人。

そこでの苗場さんの言葉ひとつひとつがすごく心に残りました。

「3年後に死ぬから生き方が変わるのか?」

「お前はあと何年生きるつもりで生きてきたんだ?」

 

確かに・・と頷きました。

今日1日だけしかないと思ったら今日何をしたいかとは陳腐で、したいことだけ考えて生きていけないですよね。でも生きていけないから、私たちはこの先何年も生きる前提で生きている気がします。多くの人が人生の儚さについて日々に忙殺され忘れている。

少なくとも私はそうでした。

もし三年後に地球滅亡が確定しているのなら私は今の仕事を続けたい?(転職後にはおそらくハイと答えたい。)

会いたい人は誰?(家族、恋人、犬)誰と最後の瞬間を迎えたい?(家族、恋人、犬)どこでその日を迎えたい?(自分の実家)

何を食べてから死にたい?(餃子ですね)

全部今から実行しても間に合うかなあ〜と能天気に考えたりしました。

人生短いです。死は予測できないからこそ人生の儚さや美しさ、哀しさが存在するのかと思います。そういう事を改めて考える機会をこの本は与えてくれました。

小説は時間の無駄と自己啓発本ばかり読む人へ是非強く推したいです!笑

自己啓発本ももちろん役立つし、読むことは学ぶことへ直結します。

が小説を読むと人の気持ちにたって考える機会が多くなります。

人への思いやりや優しさを培う練習になると私は信じています。

誰かを理解することへの一歩です。それは人間の道徳心の根底です。その上に知識をのせるから人間なのではないでしょうか。

脱線しました。が私はそう考えます。

 

そのほか各章それぞれで描かれている登場人物の考え方は多様で、こういう考えもあるんだなあと感心したものもあります。そして人物描写がとても伊坂さんは上手だと思いました。

関係性や心の内を時には明確にそして時には暗示して、読者の心にその登場人物を植えつけていくのです。最近読んだ本はここが欠けていたものが多く、感情移入できないものが多かったので久しぶりに良書に出会えたような気がします。笑

上からでごめんなさい。笑。

 

この本に対する建設的批判を私が書くとしたら2点ほど。

1 各章の数を減らし、章同士の関連性を深くして欲しかった。

 

2 滅亡直前の話または滅亡の結末を暗示させるものが欲しかった。

 

具体的には、8つの短編連作集ですが8つそれぞれに登場人物が当たり前ですが数名ずつでかなりキャラクターの数が多く、ほとんどが同じエリアにすむ住人なのでそれぞれのキャラクターに接点があるのが描かれていますが正直、ややこしかった。笑

そして接点といえど関係性はそこまで深くないです。お客でいったお店の店主が次のチャプターの主人公とかそういうレベル。

連作というより本当に短編集という感じですね。

なので4ー5つの章にして混乱を避けてそのぶん横のつながりに深みをもたせた方が構成的に読みやすかったんではないかと個人的に思います。

そして2点目に関しては、作者の描きたかった事は地球滅亡のSFではないことは100%承知した上での希望です。笑

三年前という同じタイムラインで8つのストーリーが描かれているのにやや退屈しました。

緊迫感がなくなってくる。趣旨とはずれますが現代小説だとしても地球滅亡を題材にした人々のあり方を描くなら、読者にも登場人物が感じている最大限の緊張感や恐怖を味わせた方がより強く印象に残るだろうな〜と考えます。そこが惜しいところです!

 

 

 

次はどの作品を読もうかと迷っています。

伊坂幸太郎さんのなかでおすすめあればコメント下さい。

ブログいつも見てくださってありがとうございます。